キャリバー RMAS7
スケルトン加工自動巻きムーブメント、時・分・日付表示、可変慣性モーメントローター
2004年に発表されたRM 005 オートマティックは、リシャール・ミルが世界的に成功を収めた初期の作品に数えられます。
しかし時代の移ろいは早く、2006年になると市場では大きなサイズのケースが好まれるようになっていました。そこで誕生した作品が、48.00mm x 39.30mm x 13.84mmのRM 010です。これに比べると、RM 005のサイズは45.00mm x 37.8mm x 11.45mmと一回り小柄だったことがよく分かるでしょう。
機械的な観点で見ると、輪列に変化はないものの、地板とブリッジのスケルトン構造が高度化しています。また、一部の箇所に使用される受石の色や時計本体の防水性能など、マイナーチェンジもありました。(RM 005はダイバーズウォッチ以外のリシャール・ミル作品で、唯一100m防水を誇っていますが、RM 010の防水性能は50m防水となっています。)
RM 010は、トゥールビヨン以外の腕時計はかくあるべし、というリシャール・ミルのビジョンが具現化されたモデルといえるでしょう。
RM 010の地板とブリッジには、チタン90%、アルミニウム6%、バナジウム4%で構成される合金、グレード5チタンが採用されています。この素材は航空宇宙産業や航空産業、自動車産業で多用されるなど、優れた剛性と耐腐食性が認められています。
地板にはレーシングカーのエンジン開発手法が応用されており、施された「リブ」が強度や平面性を保持しながら軽量性を極限まで高めています(想像し難いかもしれませんが、ムーブメント内では約2キロの圧力が制御されています)。この時計のために開発された特徴は、技術的理念の柱となり、あらゆるリシャール・ミル自動巻きムーブメントの基盤となっていきました。
RM 010にも、ローターの巻き上げを最適化するために可変慣性モーメントシステムを採用しています。これは当時世界初の試みであり、リシャール・ミルの特色である、ディテールへの配慮を表す格好の例です。複数の部位が重なり3つの異なる素材から構成されるこの複雑なローターは、腕や手をあまり動かさない場合には巻き上げを加速させ、激しいスポーツをする場合には減速させることで、慣性を変化させることができます。これにより、ムーブメントの巻き上げ機構を着用者のライフスタイルに合わせて最適に調整できるようになりました。同じ原則を用いた新ローターが、その後多くのリシャール・ミル ウォッチに搭載されています。