RM 004とRM 008は機械的なレイアウトと設計を同じくするスプリットセコンドであり、RM 008の動力源がトゥールビヨン脱進機である点を除けば、両モデルの間に技術的な相違点は殆どありません。RM 003では、カーボンナノファイバー製地板を採用するために、開発段階で構造設計や組立方法の全面的な見直しを余儀なくされましたが、高度に複雑な構造のRM 004では、深い位置にムーブメントのブリッジが配置されているため、何年にも渡る研究と開発を必要としました。
キャリバー RM004
手巻きムーブメント、時・分・秒表示、スプリットセコンドクロノグラフ、30分積算計、パワーリザーブインジケーター、トルクインジケーター、ファンクションインジケーター
最初に製作されたRM 004には、トゥールビヨンであるRM 002とRM 003の初期モデルと同様、チタン製地板を用いて設計された複雑なムーブメントが搭載されていました。しかしすぐに、カーボンナノファイバーを採用した仕様に変更されました。複雑時計の愛好家にとって、RM 004のタイムピースは、リシャール・ミル コレクションのなかでも稀有な作品だと考えられています。そしてRM 004のチタン製地板モデルは、RM 004-V2が製作されるまでに極めて限られた本数しか生産されていません。その結果、RM 004のチタン製地板モデルは現在、一連のリシャール・ミルのタイムピースの中でも屈指の希少性を誇っています。
RM 004の設計は発表から数年にわたって技術的な改良が加えられてきました。発表後すぐの事例になりますが、いくつかの時計で不可解な磁気が発生するという、予期せぬ問題が発生しました。その理由が判明したのは数か月後のことです。カーボンナノファイバーはケース表裏のサファイアクリスタルに挟まれていますが、高速で動くクロノグラフの針がその上を通過すると静電気が発生するため、ムーブメントは知らずしらずのうちにこのスティール製の針が原因で磁気を帯びていたのです。ひとたび原因が解明されれば解決手段はシンプルでした。針をチタン製に変更し、既にお客様に受け渡されていたRM 004の時計についてもすべてこの針に交換しました。
2016年に発表された最新改良モデルのRM 004-V3は、ムーブメントにRM 50-02 エアバスの新開発技術を複数搭載することで大きな進化を遂げました。ムーブメント担当エンジニアはさらなる改良を追求し、リセットレバーを板バネから切り離してリセット機能の制御を向上させたほか、調整可能なクラッチロッカーを組み込んでクロノグラフのスタート時に生じる針飛びを最小限に抑えています。ハンマーストップにも変更が加えられ、新しいスライドが組み込まれたことで、分積算計の駆動が最適化されました。剛性を高めるために、アルミニウム製のセンターブリッジ、プラットフォーム脱進機、クロノグラフとスプリットセコンドのブリッジは、グレード5チタン製ブリッジに変更されました。微細なディテールへの細かな改良は今も継続されており、時計が定期メンテナンスで預けられる時に反映されています。