キャリバー RMAR1
スケルトン加工が施された自動巻きムーブメント、時・分・秒・日・巻き上げ表示、パワーリザーブインジケーター、デクラッチャブル可変慣性モーメントローター。
RM 030は性能の面で真の進化を遂げています。 デクラッチャブルローターシステムは、すでにブランドのトゥールビヨン時計で用いられているトルクセンサーの延長線上にあるもので、その開発は長いことブランドの夢でした。
自動巻き時計に適用される技術的なコンセプトは、自動車の構造と密接に関係しています。
自動巻きによるゼンマイの巻き上げをON/OFFするクラッチ機構とトルクセンサーを組み合わせることでイノベーションを起こそうと考えました。ゼンマイが理想的な張りを保ち、トルクを完璧な形で確実にムーブメントへ供給することを試みたのです。
自動巻き時計の巻き上げは、動きに応じて回転する小さなローターによって行われます。このローターの回転運動が巻き上げ香箱にエネルギーを供給し、完全に巻き上げられると最適な張力に達します。それ以降は、巻き過ぎによる過剰な張力が発生しやすくなるため、これを避ける必要があります。そのため、従来はスライディングフランジを使用してゼンマイを滑らせ、ムーブメントの巻き過ぎを防いでいました。しかし、この伝統的なシステムでは、特に運動量の多い方の使用において、フランジが長時間に渡って香箱の内側にブレーキをかけるため、内部にゴミが溜まってしまいます。
その結果、計時性能に大きな支障をきたすことになります。このような悪影響を避けるため、リシャール・ミル独自のデクラッチャブルローターは、ゼンマイが完全に巻き上げられると同時に、香箱がローターの巻き上げ機構から自動的に切り離されます。さらに、この機構はパワーリザーブ表示と連動し、最適な巻き上げ制御を行います。こうしてムーブメントと調速機構はトルク/パワーのバランスを最適に保った状態で機能し、理想的な計時性能を発揮します。
パワーリザーブが50時間に達すると、特別に開発されたギアシステムによってローターが自動的に切り離されます。その結果、香箱がローターの巻き上げ機構から自動的に切り離されます。逆に、パワーリザーブが40時間を切ると、ローターは自動的に切り替わり、インジケーターが50時間に達するまで巻き上げを行います。12時位置に配置されたパワーリザーブインジケーターにより、これらの段階を確認することができます。11時位置に配されたクラッチエンゲージメントインジケーターは、ローターが巻上げ状態にあるか(オン)、あるいは巻き上げが解除されているか(オフ)をユーザーに知らせます。リシャール・ミルらしいこのデクラッチャブルローターは、その発想と小型化によって大きな革新をもたらし、並外れた技術的挑戦を意味します。
キャリバーRMAR1は40石で、4Hzで鼓動し、可変慣性モーメントを備えたフリースプラングテンプを備えています。このテンプは類まれな開発を象徴します。衝撃を受けた場合やムーブメントの組立て、分解の際により高い耐性を示し、 ひいては、長い期間にわたり高い計時精度を保ちます。緩急針を取り除き、4個の調整可能な小さな重りをテンプに直接取り付けた結果、より正確に何度でも歩度を調整できるようになりました。
RM 030のケースは、3つの主要部品(ベゼル、ミドルケース、ケースバック)の切削加工とフライス加工の前に、49回のストライキングを含む86回のスエージ加工を必要とします。加工のためのセッティングに20時間、プログラミングには30時間を要します。ケースには255以上の工具加工が必要で、最終段階では5時間以上の艶出しと研磨が行われます。複雑なケースの形状は、複雑な5軸加工機によるものなのです。ケース内側に刻まれる "Richard Mille "の文字には、1つのケースにつき45分を要します。